La Domo de mia scivolo

:: 2008-2009年度のベルギーの滞在記 ::

 

12月後半

2008年12月16日(火) :指導教官, プリンタ・インク, ワロニー語, エルヴ・チーズ, ペケ

指導教官に博論のレジュメをようやく手渡せる。休講続いたり、ロンドン行ってたりと、なかなか渡せず、メールでアポとろうにも返信がなった。ということで、研究室を直接訪ねてみた。忙しくて返信できなくてという話で、快く受け取ってくれる。明日からまたシンポジウムでどっかに行くらしくいいタイミングだったらしい。メールで添付してもよかったのにと言ってくれたけど、何となく失礼かなと思って。相変わらず忙しいらしく、次回は来年。ということで、年末の挨拶も済ませてきました。

 

プリンタのインクが切れかかっているので買ってくる。「黒」のみで19.99EUR(≒2500円)くらい(20%の消費税込み)。なんか高い気がする。さらには本体(Canon ip2600)の方が値下げされて39EUR(≒4900円)になってたので、どうにも納得いかない。本体を安く売って、サプライで儲けるこのビジネス・モデル、どうなのか。本体すら一年間の消耗品である僕のような短期滞在者にとってもおそらくお得なシステムか。ただしまったくエコではない。エコでないと言えば、こちら(少なくともリエージュのいくつかの大型電気屋)には詰め替えインクが売ってない。おそらくは複製の権利関係の裁判の影響なのかとは思うけど、ヨーロッパがエコの中心とは決して言えない。

 

2週間ぶりのワロニー語の授業。先生が先週から変わっているはずでどんな先生かなと思っていたんだけど、またまたよい先生。授業内容はいよいよしゃれにならないくらいレベルが上がった。何度も何度も声を出して読まされる。日本人でも関係なし。そしてどんどんどんどん新しい文章へ進む。一年間歯を食いしばってついていったら、本当に少しは喋れるようになる感じな授業。そろそろ予習が必要かな、そのためには辞書も。けどまず第一には、やめないこと、かな。先生に「世界一小さいワロニー語の本」を頂いた。

 

« Pourquoi veulent-ils tuer le français ? »

 

     Si ti t' vous mète so l' houp'diguèt, d' intrêye di djeû, beû on pèkèt.
     Si tu souhaites être disposé à t'amuser, commence par boire un « pèkèt ».

 

ぬっくいワロニー語のクラス:
・授業の合間の休憩時間に外に出て煙草を吸うんだけど、そこで出会うおっちゃんがいる(彼は上級のクラスの人なのでもし「煙草」がなければ彼とであえなかった)。しんどかったので「たぶん熱があるので、ダファルゴン(Dafalgan:解熱・鎮痛剤)飲んでる」と言ったら、「それじゃいけない!3杯のペケ(pèkèt)を飲めばすぐに治る」と言われた。pèkèt はジュネヴァ/ジン(genièvre)のことで、リエージュ特有の呼び方のよう。かつてはまさにこれが労働者のアルコールだったよう(ビア―ではなく)。授業でも会話でも頻出語。授業も終わり帰ろうとすると、そのおっちゃんが待っていて、「さっきの話は嘘やで、pèkèt 飲んだらだめやで」と。

・前回2週間前に参加した時、同じクラスで隣に座っていた見た目はちょっと気難しそうなおっちゃんに、その日に耳にしてた「エルヴ・チーズ(Fromage de Herve)」について聞いてみた。すると、偶然にもそのおっちゃんが Herve(リエージュの東の街)の出身で、いろいろ丁寧に教えてくれていた。スーパーでも帰るけど、すっごにおいなので冷蔵庫に保管するときは気を付けてと。それでその後買ってなかったんだけど、今日授業行ったらそのおっちゃんが Herve の観光案内をもってきてくれていた。直接行って食べてみたらいいよと。

2008年12月17日(水) :「黒と黄」, フランデレン, ブリュッセル, Pascal SMET, Kiosk, Boutik, ヒューガルデン

先週のニュース(RTLinfo.beより): 首都ブリュッセル地域政府の交通大臣(ministre de la mobilité et des travaux publics)であるPascal SMETが、ブリュッセルのタクシーの色を「黒と黄」に統一しようという案を出し、それに対する否定的反応が拡大してきているというお話。下の写真(左)がその案(写真は氏のサイトより)。何が問題かというと、この「黒と黄」という配色が「フランデレンの色」だということ。ブリュッセル地域の色はそもそも「黄と青」(EUの色と同じもの)だと。ただし、批判の前面はあくまでその塗り替え日用への税金投与だという雰囲気で、なんとも奥ゆかしくはある。

そして、昨年の「国家危機」の際にも登場した「請願サイト(lapetition.be)」も登場。ここで署名を募っている。

 

「黒と黄」  =?  フランデレン

 

彼にはブリュッセルの地下鉄の切符売場を « Boutik » と « kiosk » に統一した「前科」があるらしい。「ブティック」と「キオスク」でなんとも日本でもおなじみの両語で、フランス語にも存在する語だけに問題はないように思えるけ。けど、表記が「オランダ語風」(すなわちはフランデレン風)ということに納得いかない人もいる(た)よう。フランス語では、それぞれ « boutique » と « kiosque »。そういうことで、「ブリュッセル人である以上にフランデレン人(plus flamand que bruxellois)」と揶揄される。

観光客の感覚として、「黒と黄」がそのまま「フランデレン」と結び付くことはないのではないかと思う。むしろ、ベルギー色だと感じなくはない(赤はないけど)。個人的には、別にそこは争う所ではないのではないかなとも思う。微妙な時期、微妙な地域で、なぜわざわざ論争が起こりそうなことをする。「簡単な事を複雑にする術に長けているベルギー人」。

 

*****
9月から「ヒューガルデン(Hoegaarden)」の日本の代理店が小西酒造からアサヒビールにかわった!? でもやっぱり表記は変わらないのか。この日本語名がどこでどうこうしてこう落ち着いたのか知りたい、あまりにも大胆過ぎる。

2008年12月18日(木) :フランス語, Flamandre, クラブW杯, ガンバ大阪, Billet Shopping

Thele 先生に論文のレジュメについてのコメントをいただいた。基本的には研究領域の違いによる優しい意見と、いくつかの有難いコメント。さらにはフランス語について添削までしていただいた(母語がフランス語ではないからとそれでも目についたものと)。最近英語の文章を書いて英語母語話者に訂正してもらって訂正しなくてはならなかったという話をしてくれてなんとも励まされた。Ulrich Ammon がどっかに書いていたと思うけど、やっぱりドイツ人も英語をなおす必要があるんだね、と。

とは言っても、それはそれは次元の違う「ミス」も多々あったわけで、ちゃんとしな。自分のフランス語で一番笑ったのは、Flamandre…、なんかわかるけど。さらには、Eupope…。かわいい♪ あと、lingustique2箇所、lingusitique10箇所、これはパソコンの弊害ともいえるかも。どうやら「言語」関係の語はタイポが多い。まぁそれだけ頻度が高い(⇒慣れ)と言うこと。lagnue。こんなのを指導教官に出したと思うと、ちょっと震えてくる。

 

トヨタ・クラブW杯のG大阪-マンチェスターUの試合をjustin.tvで観戦。撃ち合いのような乱戦、嫌いな展開ではない。ガンバっぽくてよかったと思う。けど、ガンバの交代は一人でそれも40分という時間でよかったのかな。

 

先日何だこれといっていた鉄道切符の素性がわかった(cf.12月13日)。その名もそのままBillet Shopping/Shoppingbiljetという名の年末年始のプロモーション商品だった。見てみると、なかなか使えそうな雰囲気の切符。55km未満では「週末往復割引」の方が安いけど、それ以上ならばベルギー国内のどの駅間でも(当日)往復で8EUR(≒1200円)。さらには、一等車設定もある、12EUR(≒1700円)。ただし、期間が決まってる。

     ・12月20日(日)~1月4日(日)
     ・それ以外の12月と1月の土日

ブリュッセル拠点の旅行とかだとあまり威力はないかもしれないけど、国の辺境に住む人間にとってはなかなか使えるのではと思っている。ただ、1月にこれを使ってベルギー国内旅行を楽しんでいられるほど余裕があるとは到底思えない。

2008年12月19日(金) :エルヴ・チーズ, 唐揚げ, 七面鳥

なので、食べてみた、「エルヴ・チーズ(Fromage de Herve)」(cf.12月16日)。100g、1.38EUR。仕方がないのでワインも。論文書きたんだけど仕方ない。ワロニーを知るため、ワロニーを知るため。

ワロニー語のおっちゃんに、においには相当気をつけろと言われてたので、ちょっとビビってものの、それほどキツクはない(タッパかわんでよかった)。ウォッシュタイプのチーズは基本的には好き(といよりも基本キツイの好き)、これはよい。ちょっと辛いぐらいの塩分、バランスが絶妙。なんかしばらくこれだけで生きていけそうな気もする。食品の種類を選ばず一つの物をそれだけえんえんと食べる「癖」がある。やっぱり相性的には « pèkèt » とかな。

 

Fromage de Herve    唐揚げ

 

そして、「唐揚げ」を作ってみた。日清の「から揚げ粉」はあったので、後は鶏(dinde「七面鳥」)を1kg強買ってきて、ぐにゃぐにゃして揚げるのみ。ただそれだけでまさしく「唐揚げ」ができた。日本の味!?

2008年12月20日(土) :照明の妙, 電球, ドライバ, ベルジシスム, 音声/音韻, /s/ と /ʃ/

電球がよく切れる。買ってくる商品には「一年の寿命」と書いてあるくせに一か月くらいでパチンと。灯けた瞬間にショートした感じでやられてしまうので、何かが違うのかも。ただその何かは分からない。で、今まで頑張っててくれた洗面台(もちろん室内強引備えつけの)の照明がやられた。変えようとしたが傘をかぶっていて開けれない。開けるにはマイナス・ドライバーがいる。うなものはない。周りに聞いたがもってない。ドライバーって必要ないわりに(もしくはないからこそ)高い。以前に鍋を作るためにプラス・ドライバーを買った時は最安で5.69EURしたんさ。

けどなければ開けれない。開けれなければどんな蛍光灯を買えばいいか分からない。面倒くささのため(ドライバはBRICOみたいなホームセンタに行かなければ売ってない)、数日ほっておいたんだけど、今日スーパー買い物中にふと思い付いた。ナイフ(スプーン&フォークと仲間の)でいける。案の定いける。開けてみてびっくり。短い蛍光灯かと思ったものがなんと電球×2。ちょっと笑った…。さっそく買ってきて装着。もうドライバでビスは閉めません! 何故にこのややこしさ。OÙ est la 機能美? とりあえず、思い込みはいかんなとあらためて思った(笑)。

 

交換前    交換後

 

 

ベルジシスム(belgicisme)の話。あくまであくまであくまで、[方言1]のフランス語という一つの体系の内的変異の話。語彙の違い(例えば、septante ⇔ soixante-dix)に目が行きがちだけど当然「音」の違いもある。ベルギーのフランス語の音声的特徴特徴としては、Léon Warnat('Phonétique et phonologie', in Daniel Blampain et al. (dir.) Le français en Belgique, 1997, pp. 163-74.)は以下の4点を挙げている:

     ― 調(son débit)の遅さ
     ― リズム
     ― イントネーション・抑揚
     ― 母音の長さ

その他、音韻的側面も含め、ちょっと古いけど参照文献:

・Warnant (1973) 'Dialectes du français et français régionaux', Langue française, 18(1), pp. 100-25.
・Pohl (1983) 'Quelques caractéristiques de la phonologie du français parlé en Belgique', Langue française, 60, pp. 30-41.
・Baetens Beardsmore (1971) Le français régional de Bruxelles.
・Remacle (1948a) Orthophonie française.

 

で、何の話かと言えば、どうもリエージュでは /s/ が /ʃ/ となる場合が傾向がある気がしてならない。例えば、« merci » が /mɛrʃi/ と聞こえる時があるような気がしてたまらない。映画『Bienvenue chez les Ch'tis』では物凄くこの違いがフランス語北部「方言」の違いとして強調されているもの、ベルギーのフランス語についてこの違いを指摘しているものを見たことがない。けどどうもこの現象があるような気がしてたまらない(けど調べ(れ)ない、残念ならば音声学者のお作法は身に付けていない)。そもそも歯茎摩擦音として /s/ と /ʃ/ は連続的なものだろうから。日本では « merci » は多くの場合「メル」と書かれるてる(発音されている)けど、そこまで目くじら立てて問題にすることでもないかも。いやどうなんでしょ。

2008年12月21日(日) :Équipe de france/Équipe française, 「de+名詞」と「形容詞」

ふたたびフランス語への疑問。誰か教えてm(__)m 前回、忘年会でベルギー人の方と喋っていて、そうそうと思ったことなんだけど、「de+名詞」と「形容詞」の違いが分からない!!! ベルギー人の彼の話は「Ambassade de France と言うけど、Ambassade japonaise となるのは」という話で、そうそう僕も前々から気になっていて、「Équipe de france なのに、何故 Équipe belge ????」って疑問を思い出した(cf.2001年3月26日の日記)。« Les Bleus » や « Les Diables Rouges » の愛称を別にして(他いろいろ別にして…)Googleの生起頻度は以下の通り:

 

 フランス代表   ベルギー代表 
 Équipe de france   3,170,000   Équipe de Belgique   25,000 
Équipe française 123,000   Équipe belge  35,700 

 

この「de+名詞」と「形容詞」は決して等価ではないはず。少なくとも頻度の違いがみられるし、« Équipe française » は気持ちが悪いと言っていた。さらには、僕の研究分野(の一部)では « dialecte DU français » と « dialecte français » の区別をしてる。具体的には、「« dialecte français de Belgique » であるワロン語」という表現は、「科学的に正しくないわけではないが」非専門家にとっては「ワロン語をフランス語のある一つの地域変種である」と理解してしまう危険性がるとの Willy Bal('À propos des "langues régionales": Notice terminologique', Langues d'oïl transfrontalières, 1995, p. 125.)の指摘や、ワロン語などを「« dialectes français » と呼ぶことは不用意であり危険性を伴う可能性もある」とし、さらに「« dialectes du français » と呼ぶのはさらに悪い」(Jean Lechanteur 'Les dialectes', in Daniel Blampain et al. (dir.) Le français en Belgique, 1997, p. 83.)から、

    « dialecte DU français »:フランス語の[から派生した]方言=[方言1]
    « dialecte français »:フランス語の[グループに属する]方言=[方言2]

といった感じの違いを措定している。どうフランス語学的に説明されるのか。きっと山ほど研究がされているものと。

2008年12月22日(月) :『世界遺産』, ブルッヘ/ブリュージュ, Bush de Noël

TBSの番組『世界遺産」でベルギーとフランスにまたがる鐘楼群をやっていたという話を聞いた。で、気になったこと。いつから日本では「ブルッへ」になった??? サイトを見てみると「ブルッヘ(ブリュージュ)」と括弧でくるられるわけでもなく。現地語読みの尊重はもちろん大事なんだけど、ここまでテレビで唐突(な感じがする)にやってしまった大丈夫なのか。「ブルージュ」としてベルギー随一の観光地として日本で名を馳せてきたわけで、いきなり「ブリュッヘ」としてそのような伝統・慣習とうまく馴染むのか。旅行会社のツアーパンフレットはどうなってるんだろう???

毎年恒例のクリスマス・ビア― "Bush de Noël"。アルコール度数最強のビアー、12°。淡い記憶だけど、かつて "Bush"(もとものとビール名)と "Noël" の間に "de" は入っていなかった気がするんだけど、あらためて見るとこっそり "de" がはいってる。

 

交換後

 

2008年12月23日(火) :髪の毛, Eastern Youth, 『たとえばぼくが死んだら』

ベルギーの出発前に髪の毛を全部剃ってこちらにきたわけで、今の髪の長さ=こちらに来てから3か月の伸び分ということになる。だいぶ見苦しくなってきた。もともと髪が多すぎる性質なもので。まぁ切ればいいんだけど、ちょっと「実験」とおもっているわけでまだ手を付けてない。一年間手をつけなければ髪はどれくらい伸びて、どんな感じになるのか。日本にいたならばなかなかできない人体実験。この「実験」がどうにも他の人には理解されない。説明も難しいし。全体的に均一に伸びないってことは分かった。前髪は伸びない。フランス人の Matthieu(tが二つだった)がフランスへクリスマス帰りをして、いよいよアパートに誰もいなくなったみたい。怖いくらいにしんとしてる。

 

すごいものを見つけた。Eastern Youthが『たとえばぼくが死んだら』を歌っている映像。周りが静かなので勉強すればいいと思うのだが、これに足元をすくわれてしまう。

 

2008年12月24日(水) :クリスマス, ちゃんとした服, 耐久晩餐会, ホオズキ, Michel Sardou

クリスマスということで友達の家におよばれに行く。大晦日もおよばれするんだけど、その時はレストランに行くので「ちゃんとした(correcte)」服装してこなだめと言われている。スーツももってきてないし。とりあえず靴は買うにしても、ここでしっかりと服買うのもねと思っていた。そこで本日、出来得る限り「フォーマル」な格好をして向かい、友達のママに意見をいただく。「こんな感じはどうでしょう??」と聞くと、わりと哀しい表情で「違う…」と。僕の感覚では相当に「フォーマル」なんだけど駄目か…。服買いにいこ。

実はゆっく~りと食事をするシステム、あまり得意ではない。ここ数年飲み会の時間がそうとう短くなってきている。通常飲み会なら2時間もかからない。2時間足らずで記憶失う直前まで酩酊、で美しく解散、そんな流れにどっぷり。さらには昔から飲みながら何かを食べるという習慣があまりない、飲み始めると食べる必要がなくなる体質なのでこれも長時間食事には不向き。

6時過ぎに友達の友達たちが集まってきてそのままさりげなく宴が開始。つまみ系をつまみながら食前酒。食前酒をかんかん飲んだが故に、スープが出てくるときには実はもうお腹がいっぱい状態…。まだグラスも山ほどあるし…フォークナイフもまだたくさんある…。

ほんとうにたくさんたくさんたくさん美味しい料理をいただいて、チーズの盛り合わせが出てきたのが0時半過ぎ。ちなみにプレゼント交換は0時を過ぎて「Joyeux Noël」って言ってから。そしてケーキは1時半過ぎ。その後も楽しい会話は続き解散は3時半。ぼろぼろになった、途中でフランス語を聞く耳がぱたんと閉じた。さすがに若者同士のフランス語はわからねぇ~。ぱたんと閉じた。泊めていただき、電気を消してあっという間に寝た。久しぶりのマットレスがある眠り、久しぶりの掛け布団がある眠り、久しぶりの暖房のない中での眠り。快眠できた!

 

Noël   Noël

 

本日一番ショッキングだったこと:ホオズキを食べる!ケーキの上にオレンジ色のホオズキが乗っていて、「NAOTO食べる?」と聞かれた。これは絶対ベルギー冗談だと思い「食べる、食べる」と言ってもらってそのままにしていた。いや、どうやら本当に食べるらしい。まぁサクランボの感じかな。とにかくびっくりした。ちなみに「ホオズキ」は « physalis » で発音は /fizalis/ だということです。

 

ホオズキ

 

もう一つ。クリスマス・イブ→クリスマスの夜中にテレビ(TF1)で Michel Sardou のライブをやっていた。さすがに「シャンソン・フランセーズ」の国だなぁと思っていたらどうやら違うらしい。これは異例のことらしい。何故ならこの時間はクリスマス・ミサの中継があるのが当然だから。さすがにこの決定には、ローマ法王がちょっと怒ったみたい。外でて煙草吸っていたらまわりの家々も Sardou のライブを見ているようだった(ベルギー人って本当にテレビの音量がでかいと思います)。

もう一つ。クリスマスの特番と言えば「bêtisier」らしい。「珍言集」、「愚言録」と訳されるけどそんな堅いものではなく、言ってみれば日本でもよくやる「NG集」や「珍プレー好プレー」みたいなもの。こういうの大好き見たくみんな大いに盛り上がっていた。世界中の放送から集めたものを流していたんだけど、日本の『ガキの使い』の「図書館で罰ゲーム」がけっこう長い時間流れた。ヘイポーは何?と聞かれても説明できません。

2008年12月25日(木) :地域別一言語主義, クリスマス・スピーチ, 王様

それはそれはゆったりとした起床。お昼ごはんをいただいて帰ってくる。今日はブリュッセル経由。初めて接続がうまくいかず、ブリュッセルで30分待ち。今日は寒い。で、ブリュッセルからリエージュまで新しい2階建ての車両。この路線で始めて乗る。新しくて快適だったんだけど、Landen の駅で電車が止まる。Landen はフランデレン・ブラバント州で車内放送はオランダ語のみ!!!! 車内の空気を察していろいろ聞いて状況が理解できる。リエージュへは電車を乗り換えなければならないということらしい。地下道を渡ってホームを変える。次の停車駅の Waremme はリエージュ州で所要10分弱。乗客はほぼリエージュ行きの人たちなんやから、乗り換えしなければならないことはフランス語で車内放送してくれてもいいのに。地域別一言語主義を推し進めていくと結局こういうことになる。

よく「多言語国家」として名前を出されるベルギーですが、その実、「多言語国家」という語がかもしだすユートピア的意味からは最も離れた「言語的不寛容さ」の権化たる存在。

 

クリスマス恒例(?)の王様のスピーチ(Discours de Noël / Kersttoespraak)。王様は年二回(7月21日とクリスマス)フランス語とオランダ語(実はちょっとだけ最後に簡単なドイツ語の挨拶も)でスピーチを行う。これがほんとうにゆっくり喋ってくれるので、ディクテの練習に最適。ということで2008年クリスマス・スピーチのフランス語版(あくまで練習なので間違いがあるかもしれません)。SOURCE

Mesdames et Messieurs,
La Reine et moi et toute notre famille vous souhaitons de bonnes fêtes de Noël et de Nouvel An.
Elles sont l'occasion de repenser à l'année écoulée et de former des voeux pour 2009.
Notre pays est secoué par une nouvelle crise politique qui trouve son origine dans la crise financière internationale et ses répercutions en Belgique dans le domaine judiciaire.
J'espère vivement que le sens des responsabilités de chacun conduira rapidement à la formation d'un nouveau gouvernement, en mesure de continuer à affronter efficacement les défis économiques, sociaux et financiers urgents de notre pays.
Les tensions politiques ont été fortes, mais je me réjouis beaucoup qu'un dialogue inter-institutionnel ait débuté.
Comme le soulignaient les médiateurs, il s'agit d'entamer des négociations sérieuses et crédibles devant aboutir à une réforme approfondie et équilibrée de l'Etat.
J'espère vivement que, malgré les difficultés, ces travaux se poursuivront dans un esprit constructif et aussi dans l'indispensable discrétion.
L'enjeu essentiel pour notre pays est le bien-être de tous.

映像を見て思ったけど、王さんってカンペを読んでるんやね。それになんかちょっと目つきが悪い。もっと温和なイメージがあったんだけどなんかしかめっ面。

2008年12月26日(金) :グラン・プラス, お買い物, 日本人/中国人, ベル本

JALのクリスマスの壁紙が「グラン・プラス(Grand-Place / Grote Markt)」だった(⇒ JALサイト)。ほぉ。「グラン・プラス」と言えば。« place » は女性名詞だから « Grande Place»「グラン・プラス」にならないといけないのでは。フランス語初学者にしめしがつかない。

 

すっばらしくいい天気。寒いには寒いんだけど、雲一つない快晴。気持ちがいい。大晦日用の服を買いに街へ。ようやく自分の服のサイズが分かった。40~42。これはMとLのちょうど境界ぐらいの大きさらしい。いやーそんなにベルギー人大きくないと思うんだけど。別に街を歩いててもそんなにちっちゃいと思わないし。北に行ったらでかいのがごろごろいるんかな。靴屋さんにて(靴ってのは見た目いい感じのものはやっぱりいい値段する)、自分のサイズの靴を探しに行ってもらってる間(靴のサイズは44~45)、店のおばちゃんに「中国から?」と聞かれた。「日本からです」と答えると、「あぁそうよね、でかいから」と。日本人は中国人よりでかいというイメージらしい。

 

散財、散財。お金使ったついでに本屋に。人に溢れている。まぁ街中もそうなんだけど、Fnac 内も人、人、人。プレゼント用配置なのかいつもとは少し陳列が違う。おっきい版の写真集みたいなのが多い気がする。勝手なイメージかもしれんけど、ベルギー人は「本」をプレゼントに使う。お目当ての Jean Haust の『リエージュ・ワロニー語辞典』はなかった(前回はあった、そしてワロニー語の先生に聞くとやっぱりこれが一番良いと)。よって以下の三冊を購入:

 

« Parlez-vous belge ? »   « Nouvelle histoire de la Belgique: Vol 2 1905-1950 »   « Ça ne s'arrange pas... »

 

[左]Carly, Michel et Jacqueline Lempereur (2008) Parlez-vous belge ?, Éditions d'Orbestier.
まぁ「ベル本」ちゅあ「ベル本」。「あなたはベルギー語を話しますか?」って、「ベルギー語」って。それがいったいどんなものかと言えば「ワロニー語とフランス語のことばの奇妙に入り混じったもの(les brassages pittoresques de langages (...) entre le wallon et le français)」と。一応両者を区別することは区別しているみたい。新手の「ベルジシスム辞書」といったところの本。

[中]Dumoulin, Michel et al. (2006) Nouvelle histoire de la Belgique: Vol 2 1905-1950, Complexe
以前買った分の片割れ。1905-1950年という激動の20世紀前半。これまた3つの大きな論文で成り立っていて、それぞれにISBNがふられている形式。Fnacにこの第二巻がそのまま残っていた。ベルギー人はわざわざ「ベルギー史」を買わないわけか。これが29.90EUR(≒3800円)とわりといやな値段設定。重いしもって帰るにしても、送るにしても大変だなと思いつつ、買ってしまう。大小勘案すると「ベルギー史」本は山のようにあるわけで、(読むにしても→分厚いから大変、買うにしても→わりとお高い)なにかこう「決定版」があればいいんだけどと思うこの頃。そしてこれはわりと(もちろん現時点では)「決定版」として使えそうな気がしてる。

[右]Kroll, Pierre (2008) Ça ne s'arrange pas..., Luc Pire
新聞 Le Soir なんかでお馴染みの Kroll さんの漫画。2007年から2008年のものなので、例のベルギーの「危機」が題材になっていたり、その他サルコジの登場やオリンピックなどが題材に。悲しいかな、まったく理解できないものがわりとある。悲しいかな。

 

ちなみに「ベル本(べるぼん)」とは。私が勝手に作った言葉。学術的ではなく、なんとなく(多分著者は真剣に)ベルギーについて語っている本。これが本当に巷に溢れている。以下その特徴:
   ・表紙がなかなかかわいい。
   ・黒・黄・赤の三色が効果的に用いられている。
   ・絶版が異様に早い(大きな出版社でも)。
   ・引用元が示されていない。
   ・悲観的な結論のようで、そうでもない。
   ・表題は疑問形???

2008年12月27日(土) :電球, チーズ, フランス語の擁護と顕揚

数日前に電球がよくきれると書いたけど、9月にIKEAで買ったスタンドの電球もきれた。お前も…。間違いなく「寿命一年間」と書いてあったのにきれた。40WのE14型とあったので間違いなくそれをチョイス、けどきれた。どういうことでしょう。

ここ数日顔に吹き出物が大発生。思いつくのはチーズか…。そういゃ家にいる時はずっと Herve のチーズを食べ続けてる。ほぼそれだけ。どうにもハマル癖がある

 

Lecherbonnier, Bernard (2005) Pourquoi veulent-ils tuer le français ?, Essais Doc.
ちょっと前に買っていてそのままほっておいたんだけど、ちょっとだけ齧ってみる。驚いた。大きく言えば、英語の流入に晒されるフランス語への憂いであり、相変わらずの「フランス語の危機(crise du français)」言説。こんな「フランス語の擁護と顕揚」本がいまだに出版され続けるフランス。著者はパリ第8大学のフランス文学の先生。すごいねフランス。いや、日本も同じかな、日本語礼賛っぷりでは。使用されている表現や単語が難しくて、読むのをやめた。。。

 

« Pourquoi veulent-ils tuer le français ? »

 

2008年12月28日(日) :日曜日

日曜日。朝買い物に向かうもスーパーが閉まってた。日曜日か。最近曜日の関係ない生活を送っていたので。

2008年12月29日(月) :…

書くことがない。そりゃあ引籠って論文書いてるわけで。

とりあえず一通り書こうと思うんだけど、些細なことが気になって遅々として進まない。趣旨に関係あることないこと。そう言えばなんでフランス語を「モリエールの言語(langue de Molière)」と呼ぶのかな~と、まったく関係ない。コマゴマと嫌な性格。細に拘らないスケールのでっけー研究がしたい。

2008年12月30日(火) :…

2008年12月31日(水) :大晦日, 車内の座席, お年寄りとダンス, tenue de ville

久々に書くことがある日。大晦日会(réveillon de nouvel an)へおよばれ。いつものように電車で。リエージュでて次の駅アンス(Ans)で既に電車が遅延。ブレーキの異常らしい。最初は10分ぐらいの遅れで、目的に着くころには40分の遅れ。駅まで迎えに来てもらっていたので、大きく待たすことになった。ごめんなさい。

車内検札で車掌から「Bon voyage」と言われた。初めて。いつものくせで反射的に「Également !」と。働いている人にそれはないな。

電車で気になっていること。4人掛けのシート。進行方向に向いて窓側に一人で座っている時の話。日本では後から来た人は対角線上(進行方向逆+通路側)に座る傾向が高いと思うけれど、こっちではほぼ向かい側(進行方向逆+窓側)に座ってくる。邪魔くさい。

     ↑|-●        ↑|●-
     窓|○-  ではなく  窓|○-  :(○=自分、●=相手)

 

我が友、友母、友の友でレストランに向かう。年越し特別カウントダウン営業。なかなかお年を召した方々が多い空間。おじいちゃんとおばあちゃんが煌びやかな衣装で集う空間。生バンドの演奏に合わせてお年寄りたちがセンターで踊り続ける空間。当然、料理のペースは遅い。8時過ぎに始まり、カウントダウンがありその後メイン。デザートが出てくるのは2時半…。

今回は我が友の招待で、飲み物は例の「定期的に各個人が順番でみんなの飲み物をおごっていく」というよく訳の分からない制度。選択肢は「水 OR コーラー」。基本的にみんな飲まない人たち。早々とこの制度を抜け出し、かってにビールを頼みかってに自分の分だけ払う制度に移行。Chaimay(3.4EUR≒430円)と Orval(3.5EUR)を交互に自分のタイミングで、一人アルコール。ただ先がものすごく長いのでちょっとペースをとして。ただレストラン内すべて禁煙なので、喫煙のために外に出るとものすごく寒いので、その度に酔いがさめる。終わるころにはちょうどそれぞれ5杯づつの計10杯。間はもった。

 

大晦日  大晦日  看板

 

入口にはちゃんとした服装じゃないと入れませんよ、の看板。この « tenue de ville » は辞書では「タウンウエア」とあるけど、そもそもタウンウエアの意味が分からない。看板には chemisette sans manches「袖のないシャツ」は駄目とあるけど、中は肩を露わにしたピカピカ衣装に身を包むおばあちゃんたちに溢れていた。あれはいいのか。けど、70とか80歳になって、あんな衣装着て、夫とぴったりくっついてダンスして、そして絶えずちゅっちゅしている社会ってのも、不思議だけどよいのかもと思った。宴は朝5時まで続くそう、けど3時過ぎには途中で退席。

 

 

 

1月へ



石部尚登(いしべなおと):naoto19@aol.com