La Domo de mia scivolo

:: 2008-2009年度のベルギーの滞在記 ::

 

12月前半

2008年12月1日(月) :博士論文, Saint-Nicolas des étudiants, 格安航空会社, Ryanair, Wizz Air

昨晩はせっかく家待機でお勉強をと思ったのに、家の中が夜中までわっちゃわっちゃ…、祭り…、これやったら外行きゃよかった…。と、思いつつも、只今6:22。ここ3週間ぐらいずーーーっとやってきた博論のフランス語版レジュメをとりあえず書き終えた。それぞれの章を簡単にまとめつつ、28ページ。なんか一本の論文みたいになった。といよりも、一本の論文になるくらいの内容ということか…。それにしても思いました。普段どれだけ日本語で「逃げている」か。母語以外で書くとなると、語彙の未熟さも相俟って、論理的な流れの不自然さが見えてくる。いつも、どれだけ冗長か、どれだけごまかしているか、どれかけ言葉を弄んでいるか。ちょっと構成をいじります、もっと「流れ」を大切にしようと。まぁ普通にフランス語の「ミス」もたくさん。性・数の一致、エリジオン、スペルミス…そんなものです。

 

引き続き「学生のサン・ニコラの日」。つか、今日がメインかな。ということで、大学はお休み。サン・ニコラがいるでとのことなので散歩がてら大学まで行ってくる。まだ時間がちょっと早いらしくニコラは見ることはできなかったけど。街中に白装束(Baptêmeでよく見るあの小汚いやつ)の若男女が溢れている。で、彼/彼女ら小銭を要求してくる。それで「飲む」らしい。それが伝統らしい。私も学生、そして人が飲むのにお金をあげるわけにはいかない。何度も何度も何度も断り続けるお散歩。疲れる。信号で止まる車にまでせびる彼ら。わざわざ車のウィンドを下げてまで小銭を挙げる人がいるのには驚く。日本でもいけるかな。なんとなくいける気もする、大学の伝統行事だと称し街行く人から小銭をせびる。一日頑張れば夜にはちょっと小粋な飲み屋に行ける。あるねぇコレ。

 

サン・ニコラの日

 

**********

ダブリンからロンドンまでのエアーのチケットを予約する。まだどうやってアイルランド行くか、というよりもアイルランドに行くかどうかすら決まってないけど、ライアンエアー(Ryanair)のサイトを見てたら、9日ダブリン発のチケットが0.99EURだったので思わず。とりあえず「復路」だけ先に。料金:0.99EUR(Dublin - London) 23.27EUR(税金) 5.00EUR(空港でのチェックイン代、EU住民以外はこれが必要) 5.00EUR(クレジットカード支払い手数料、他に選択肢なし)と、当然のように「諸々」ついて34.26EUR。それでも安い。ロンドン着なんだけど「格安航空会社」にありがちなメインではない中小空港利用。London Gatwick って? なんしか遠いらしい。「詐欺」だと一瞬思うも、いやいや、かつては成田を「新東京国際空港」と呼んでたわけで。

格安航空会社の値段設定は大胆。はっきり言ってバスよりも安かったり。東欧にまた行きたいんだけど、Wizz Airをちらちらみる。すごいね。サイトみてるだけでドキドキ、やめれん。

2008年12月2日(火) :ワロニー語, 冠詞, ベルジシスム, 冠詞

急激に寒くなりました。書き上げた博論レジュメを指導教官に渡そうと研究室を訪ねるものの、本日はいないとのこと。やっぱりアポとった方がいいのかな。お世話になっている日本語(文化)の Andreas Thele 先生には渡せた。2週間後にコメントを頂く。

 

ワロニー語の授業。今の先生の最後の授業。来週からは別の先生になる(来週は参加できないけど)。いい先生だったのに。

受講生が大分固定されてきた。僕を含め5人。若い子は結局来ないみたい。で、本日の授業。公的な助成がほとんど出ないというワロニー語「詩」。最初にテクストなしで、先生が読んでくれる。で「どう?」と。僕は「外国語みたい!」と答える。けどよく考える(までもなく)フランス語も「外国語」です。その詩をもとに冠詞のお勉強。あっ、Jules CLASKIN さんの作品。

 

Fouwå      
 
Li solo spite dè feû so lès cwårês
dèl cinse, qu'a l'êr d'on bokèt d'plonk so l'vért cot'hê;
è bas dè cîr, i tape si grande blamêye
Come ine èclameûre al vèsprêye.
 
Ciste èwarante loumîre sût lès-arôyes
d'avå lès tchamps,
si trèbouche so 'ne oûrbîre èt fêt, tot s'kiwèrtchant,
dès granbouyèdjes di rotchès rôyes;
tot fant qu'lès roukes di so lès téres
s'èsprindèt come dès bruzis,
li solo hène ine blame qui va r'glati
so l'hî d'ine èrére.
 
Mins l'nut' trèfèle dè bahî l'teûle
èt, come si c'èsteût dit leûs deûs,
po l'fé t'ni keû,
rade èle diffûle ine siteûle.
 
Mins l'solo vout 'ne rawète
divant dè taper djus
èt po nos dîre : « Bone nut' ! », come i veût la d'vant lu
on tot p'tit cok'rê d'ôr, il lî hène ine blawète.
   <定冠詞>
 男性名詞   女性名詞 

 子音の前  li
 母音の前  l'
複数 lès


<不定冠詞>
 男性名詞   女性名詞 

 子音の前  on ine
 母音の前  in in'
複数 dès


<部分冠詞>
 男性名詞   女性名詞 
 単数  dèl
複数 dès


<縮約>
   : [de + li (男性・単数定冠詞)]
  dèl : [de + li (女性・単数定冠詞)]
  å : [a + li (男性・単数定冠詞)]
  al : [a + li (女性・単数定冠詞)]
  ås : [a + lès (複数定冠詞)]

 

なかなか興味深い言語現象:

・男性単数定冠詞 li が l' となるのは「後に」母音が続く場合だけではなく、「先に」支え母音?(voyelle d'appui)がある場合は後ろが母音であるか子音であるかに関係なく l' となる。
        Li solo spite ⇔ Mins l'solo vout...

・フランス語では前置詞を重ねるってことはほとんどないが(chez)、ワロニー語では特に「~の…」の場合には普通。
        li båcèle d'å botike ⇔ (fr.) la fille du magasin / d'å = de + à + le

・フランス語と名詞の性が異なる
        (f) djote ⇔ (m) chou

・表現の仕方の問題
        ワロニー語では決して「20時」とは言わず、「夜の8時」と言う

 

最後の特徴は現在フランス語の中でも生き延びているようで、「リエージュ人は « 8 heures du soir » と言って、決して « 20 heures » とは言わない」と受講生のおばちゃんが言っていた。それを使うのは「鉄道だけ」と。こういうのは「間違い」にならないけど、たとえば2番目とか3番目のワロニー語の特徴(wallonismes)をそのままフランス語に取り入れると、それはフランス語の「誤り(faute)」になる。かつては大多数のワロニー人がフランス語を学校で習わなければならなかったわけで、こういう二つの言語の干渉が「ベルギー特有のフランス語(belgicisme)」の一つの源泉としてある。le wallon ≠ belgicismes。ちなみにそういう誤りは「とんでもない・記念碑的な誤り(faute monumentale)」だと学校の先生に怒られたんだって。

2008年12月3日(水) :雪, ブリュッセル, ブリュッセル自由大学, バス運転手

またまた降雪。降り過ぎじゃないかと。そんな中ブリュッセルへ。いろいろ用事があったんだけど、なかなか時間が取れなかったので。雪の中。電車大丈夫なんかなとちょっと心配しながらだったけど、途中 Landen の駅を越えたあたりから、青空。ブリュッセルはものすごい寒いものの快晴。ブリュッセルに来るときはいつも天気が良い。北駅でサンプドリア(Sampdoria)のマフラーをした集団を見る。今日は Standard とのUEFAカップの試合があるので、彼らはリエージュへ向かうわけか。

 

白銀の世界  薄暮のブリュッセル  グラン・プラス

 

あーだこーだ、あーだこーだ、いろいろ作業を済ませる。

良かった事:フランス語の方のブリュッセル自由大学(ULB: Université Libre de Bruxelles)の図書館は使いよい(ただし今日はなんか異様に人がいた、何故?)。特に、国会議事録(Annales parlementaires de la Belgique)や、法令集(Pasinomie)をしこしこ参照するにはここが一番やりやすい。新聞などが集められたそれ用の部屋(2QUO-NB)があり、自由に手に取って参照できる。もう一つ。書庫の本を取ってきてもらうのにその受付の男子(去年もとっても優しくしてもらった、覚えてる)によくしてもらう。一度ははねつけられた本も、もう一度調べてくれて、自ら書庫までいってくれる。みんながそうじゃないんだけど、本当にありがたい。涙が出そうなほどうれしかった。図書館においては男子にとってもよくしてもらってる気がする。

哀しかった事:そのULBの帰り。大学の前から中央駅まで行きたかった。たしか71番のバスで(少なくとも)近くまで行けるという記憶があり、ちょうどバスが止まっていたので運転手に尋ねた。「中央駅に行きますか?」。彼の答えは「私たちは中央駅に行かない」。じゃぁ近くまで行くのか、乗り換える必要があるのか? いろいろ聞くがその後、彼の答えは全部「私たちは中央駅に行かない」。運転手の彼は新聞を広げながら。哀しかった…。ベルギーねぇぇぇぇぇ、嫌いです、となった。

 

その後、ブリュッセル在の先輩にある。いろいろ刺激を受け、帰り際にグラン・プラスへ。それはそれはライトアップされてて綺麗でした。

2008年12月4日(木) :身分証明書, Cité administrative, La dialectologie, 古本, ベルジシスム狩り, 規範主義

久しぶりに昨晩は完璧に夜眠る(スタジアムから大歓声が聞こえていたが、Standard が Sampdoria に3-0で勝利!!盛り上がったことでしょう)。朝(ちょっと遅め)の心地のよい目覚め。ただし外はしばれる朝。先日ようやく正式のIDができたでという通知が届いてたので、昼から Cité administrative(≒役所)へ。正式な身分証明を手に入れるために2ヵ月半、長かったなと感慨に浸りながら待つ。で順番。前の「仮の身分証明書」を忘れた…。当然「どうにかなりませんかね~」と懇願したところで駄目。届いた通知にもしっかり書いてある。ミス。う~~~~~~~ん。なんか急にめんどくさくなってその後の授業を無視して帰宅。今日はお終い。

 

昨日、ブリュッセルで買ってきた本:

   POP, Sever (1950) La dialectologie: aperçu historique et méthodes d'enquêtes linguistiques.
   HANSE, Joseph et al. (1974) Nouvelle chasse aux belgicismes.

イクセル地区(Ixelles/Elsene)にある古本屋さん("Librairie HANKARD", 25 Rue de la Paix 1050 Bruxelles)。ちょうど一年ほど前に訪ねて、その時に POP の『方言学』(写真:左)があるのを確認してた。去年は購入を断念したんだけど、最近ちょっと入手したくなり、いろいろ調べてたらこの店が圧倒的に安いことに気付いた。日本で買おうとしたら\69,500やからね…(進省堂書店)。これは特別としてもヨーロッパの他の古本屋よりも圧倒的に安い。あれから一年たつけど間違いなく売れていないという根拠のない確信をもって昨日再び向かったわけ。

12時開店なのに、12時半くらいになりようやく開店。店に入り一目散に「言語系」の棚に向かうと、ありました! まぁ売れないよねコレ。値段は昨年と変わらず30EUR。早速購入。銀行カードが使えず、おっちゃんに教えてもらった近くの Dexia のATMで現金を入手したうえで。おちゃんには「(銀行で)待ったやろ?この時間は銀行に行かんほうがいいよ」言われながら。ついでに『新ベルジシスム狩り』(写真:右)も発見したので購入(10EUR)。実はこれもなかなか入手し難い本で、見つけて本当にときめいた! ここのおっちゃんは本当にいい感じの人で、聞いたらいろいろ丁寧に教えてくれるし、なかなかお勧めの古本屋さん。1970年代の『現代言語学(linguistique contemporaine)』があったり、Chomsky のフランス語版があったりと。最後は « bonne lecture ! »。

 

« <i>La dialectologie</i> »    « <i>La dialectologie</i> »

 

Pop (1950):
700頁をこえる大著。それでも二巻本の第一巻。第一巻は「ロマンス語方言学(dialectologie romane)」に、第二巻は「非ロマンス語方言学」にあてられている。少なくとも当時(1950年)までの(ヨーロッパ視点の)方言学の総括としての性格をもつ著作。歴史的な概観として Paul Meyer や Gaston Paris のいわゆる「方言境界線否定」の理論をふくめ詳述している点や、ワロニーの方言(学)について多く語られているなど、非常に興味深い。この時期に、それまでの方言学の総括的書籍が刊行されたのがベルギーであるって事が、ベルギーの強固な(伝統的)方言学の歴史の証左であるともいえる。ただし、この Sever Pop という研究者はベルギー人だと思っていたけど、どうやら違ったみたい。ブカレスト大学の先生だったのが、ルーヴァンに招聘されてきた人のよう。

 

Hanse et al. (1974):
1971年に出版された『ベルジシスム狩り(Chasse aux belgicismes)』の続巻。これはそのタイトルが示すように、ベルジシスム(belgicismes)を狩りの「獲物(gibier)」にたとえ、そのようなベルギーの大地に「うまく身を潜めている野兎(lièvre)を狩り出そう」という企図のもとで出版されたもの。この前著が発売以後2年間で3万4000部が売れたとされ(Francard (1993) 'Entre Romania et Germania: la Belgique francophone', in Didier de Robillard et Michel Beniamino (dir.) Les français dans l'espace francophone, tome 1, Champion, p. 62)、その評を受けた第2弾。「同郷の人々[=ベルギー人]に、普遍的フランス語の中に溶け込み、自らをよりよく表現することを奨励し、またそれを手助けする」ことを目的とし、ベルギー人の「フランス語を改善することを可能とするような資料を提供する」。これが、市井の「フランス語教育者(=文法家)」によってなされたものではなく、非常に著名な言語研究者の手によってなされたものであることが重要。ベルギーの言語研究の二大潮流、先の「方言学」と共に、もう一つの大き流れとなる規範主義(purisme)の伝統の代表的作品。

2008年12月5日(金) :ID, クリスマス市, 花火

ようやくようやくようやく、IDを取得。長かった。今日対応してくれたおばちゃんは本当にいい人だった。とことん優しく、とことん愛想よく。ベルギーねぇぇぇぇぇ、悪くないやん、となった。というよりも、やっぱり「人」、どこでもいい奴もいれば、やな奴もいる、そんな真理に行きついた。

街中にクリスマス市が登場。ついでに観覧車も、こういうのがさらっときて、あっという間に組み立てられる様は、本当にすごいな、と。

 

クリスマス市

 

よるうちの kot で我が友とアルコールを飲んでいると、爆音とともに、Guillemins の駅の方で花火が始まった。部屋から見る花火+アルコ、なかなかよかった。ただ、これが何がための花火なのかは分からなかった。イベントごとの多い所だ。冬の花火って好き。

 

花火   花火

 

2008年12月6日(土) :ユーロスター, 入国審査, 地下鉄, Oystar Card

イギリスへ向かう。一つ気付く。ユーロスターのチケットでベルギー内の駅から出発駅/到着駅である Bruxelles Midi までは無料でいける筈なんだけど、チケット自体は Midi 駅で引き取るので行きは自腹なのか…。なにか手段あるのでしょうか?とりあえず Rail Pass で。ちなみに、

      « Valable de/pour toute gare belge »

この « tout(e) » の用法がずっとちょっと気持ち悪く感じてる。複数で冠詞をつけてでいいと思うんだけど。なんか居心地が悪い。

入国審査。10分以上。「期間?」「どこ行く?」「どこに泊まる?」。滞在期間が短いくせに、アイルランド行くとか(それも復路のチケットだけ予約済み)、ロンドンで泊めていただく先輩のホテルの住所を知らなかったり、まぁいろいろあったんでしょう。「観光する」→「どこを?」→「ロンドン」→「ロンドンは広い!」→「有名なところ、まだ予定はない」。怪しい。大丈夫、住みついたりしないから、100%。ベルギーでは何の研究しているかとか、必要ないでしょう。

 

英語の国。とりあえず泊めていただくホテルに向かうために地下鉄。まったく無計画だったから後の祭りだったんだけど、地下鉄のチケット(Zone 1なので初乗り運賃)を£4で買う。560円…。数年前なら900円近く!?初乗りが…。ちょっと売場の前でひく。後で教えてもらったが、Oyster Cardってのを買わないことにはやってられないらしい。これで初乗りが£1.5、それでも£1.5。日本と同じくらい。入金は£5単位で top-up。

 

公共交通禁酒令   不正乗車の罰金

 

地下鉄ポスター。公共交通機関の中での飲酒が今年の6月から禁止になったよう。そういうのを禁止しなければならないって…。普通の電車はどうなんだろう!? あと不正乗車が見つかると£20。これは安い!と思った。けど、自動改札がしっかりしててブリュッセルのようにはいかない。

2008年12月7日(日) :ストーンヘンジ, イギリス鉄道

とりあえず昔から見たかったストーンヘンジ(Stonehenge)。見てみると想像よりもちっちゃかった。帰りのバスを待っていると、どんどん人がやってきて、どんどん人が帰って行った。ものすごく人を惹きつけるものの、粘着力のちょっと弱い観光地。回転率のよい観光地。

 

Stonehenge   Stonehenge

 

鉄道料金:朝Waterloo駅に行って、窓口でチケット購入。Salisbury まで往復£26.80(≒3700円)。異様に高い気がした! いまいち料金システムが分からない。片道でもほとんど変わらない料金設定。前もって買うと劇的に安くなるようだけど…、それはなかなか難しい。ベルギーとの比較。Salisbury までは150kmとのことなので、ベルギーでいうと、Liège-Gent 間ぐらい:

      区間 片道 往復
      London - Salisbury    £26.70   £26.80
      Liège-Gent €18.40 €36.80(週末:€19.20)

思った以上に微妙…。平日思い立って、日帰り往復するならイギリス!? ただし、Off-Peakでなきゃならんだとか、日帰りじゃなければ高くなるだとか、複雑。まぁ単純には比較できないとのことで。イギリス鉄道の時刻&運賃:National Rail Enquiries

2008年12月8日(月) :ロンドン, 大観光, Abbey Road, サッカー, プレミアリーグ

ロンドン大大大観光日:予約したRyanairのアイルランドからの復路が明日…ということなので、少なくとも今日何らかの手段でアイルランドに行かなければならないんだけど(本当は昨日の夜行バス/鉄道+フェリーもありかなと思ってはいた)、ちょっと気持ちが折れた。調べると割と高いし…。今日は月曜日なのにプレミア・リーグ(Premier League)の試合がある。West HamTottenham Hotspur。高校生のころBSでプレミアリーグの試合が放送されていて見てた。こっちにしよう、ということで朝から試合開始の20:00までは大大大大観光。

 

朝から頭にあるロンドンをたどる。アビー・ロード(Abbey Road)見て、グリニッジ天文台(Royal Greenwich Observatory)見て、歩行者用の海底トンネル(Greenwich foot tunnel)でテムズ川を渡って、タワー・ブリッジ(Tower Bridge)見て、

 

Abbey Road  Abbey Road  Greenwich foot tunnel  Tower Bridge

 

ロンドン塔(Tower of London)見て、もちろんフィッシュ・アンド・チップス(fish and chips)食べて、帝国戦争博物館(Imperial War Museum)見て、ウェストミンスター宮殿(Palace of Westminster)とビッグ・ベン(Big Ben)見て、

 

Tower of London  fish-and-chips  Imperial War Museum  Big Ben

 

ついでにロンドン・アイ(London Eye)を望んで、ヴィクトリア記念碑(Victoria Memorial)見て、バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)見て、最後にぼろぼろになりながらトラファルガー広場(Trafalgar Square)に辿り着く。さすがに疲れた。極寒。

 

London Eye  Victoria Memorial  Buckingham Palace  Trafalgar Square

 

さて、フットボール。ウェスト・ハム(West Ham)のホームで、スタジアムは District Line の Upton Park 駅(Zone 3)下車徒歩10分程。チケット代はメインスタンド左端の上の方で51£。これは高い。今1£=140円として7000円強。1£=240円ほどの時代(一昨年!)だったなら1万2000円!! ちょっとした代表戦価格。同じ一部リーグなのに、ベルギーと比較すると…。学割はないし。たっかいたっかい料金を払い、さっむいさっむい中の観戦。試合内容も寒い寒いもので、ホームのウェスト・ハムが0-2で負けた。プレミアリーグとは言っても、ロンドンのチームとは言っても、両チームとも15, 16位あたりをうろうろしている現状のチームだからね。

ベルギーのリーグとの違い。客層の違いか。Standardのゲームには子供や女子が多く、アットホームな雰囲気。罵声も「それほど」ないし。一方のイングランド・サッカー、熱い。壁は叩くは、ずっとブーイングし続けるは。ヨーロッパサッカーの「雰囲気」としては後者が尊ばれるのだろうけど、ベルギーの(Standardの)スタジアムの方が観戦にはよい雰囲気だと思う。さらに、ウェスト・ハムのスタジアムでは、売店で買ったビール(1パイントが£3.5≒500円)をスタンドの席に持っていくことができない。観戦しながら飲もうと思ったら「飲んでから」と注意された。後、ウェスト・ハムの方はスタンドの席でも、売店前でもみんな煙草を(ほとんど)吸わない。法律で決まっているのか、ベルギーとは大きく違う。もう一つ。トイレはイングランドでは無料、ベルギーでは有料。

 

Premier League  Premier League  Premier League

 

2008年12月9日(火) :Oxford, Blackwell, 大英博物館, バビロン

アイルランド行きをすっぽかしたためにぽこんと空いた一日。けどさすがは大ロンドン。まだまだ見たいところはある。とりあえず大英博物館(The British Museum)行っときましょう。またちょっと足を延ばしてみたくなり、Oxford にも。権威好きミーハー。というか、社会言語学で日々お世話になっている出版社/書店Blackwellに一度行ってみたかったというのもあるし。

 

朝、地下鉄で Paddington 駅まで行って、そこから電車。先日の Salisbury よりはだいぶ距離が近いと聞いていたので、だいぶ安いのかなと期待して電車にしたんだけど、料金はオフ・ピークの往復で£19.00(≒2600円)、そんなもんか。バスにすればよかったかな。乗車時間は1時間ほど。

伝統的な大学街ということで、比較的小さくて落ち着いた静かな街をイメージしてたけど、すでに電車の中から超満員。電車がついて人が街にどっとはき出される。そしてすでに街は人で溢れている。やっぱ一流の観光地でもあるわけね。

 

Oxford  Oxford  Oxford  Oxford

 

Blackwellの本屋。とりあえず言語系の棚へ。たしかに沢山のお馴染みの本があるにはあるけど、「一般言語学(general linguistics)」というざらっとした分類はいかがでしょう。社会言語学も意味論も混ざって提示されている。言語学の捉え方としては面白いのかもだけど。「一般」ではないものとしては「バイリンガリズム(bilingualism)」だけ!? 実はよく分からない状態で行ったんだけど、この本屋のBlackwellはあの出版社のBlackwellともちろん関係があるのよね!? 調べてみる。すると出版社の Wiley が Blackwell を買収したとのことだった(⇒記事)。Oxford University Press の店もあったのでそれも含め本屋めぐり。大学都市ということで、しぶい古本屋さんであふれているのかと期待してたけど、あまり古本屋を見なかった。見つけられなかったのか、なかったのか。

 

Blackwell   Oxford University Press

 

ロンドンに戻って大英博物館。本館自体の入場は無料とのことだけど、地下鉄のポスターなどでよく宣伝してた特別展 « Babylon: Myth and Reality » をまず見る(£7)。これが面白かった。実証的な証拠がないにもかかわらず何故バベルの塔はあのくるくるとした感じでイメージされ続けてきたのかや、バビロンの史実的側面と創造的側面の説明などなかなか。

で、アフリカの展示室にモザンビークの銃の木が展示されていた。これって数年前にちょっと話題になったもの? 別物?? なぜここにある??? また持ってきた???? 終わってみれば、本日も大観光。

 

The British Museum  The British Museum  The British Museum  The British Museum

 

2008年12月10日(水) :帰国, ユーロスター, ウェンブリー・スタジアム, 大英図書館,

帰国の日。ユーロスターが14:34なので、ちょっと時間潰し。ロンドン北西部のウェンブリーのウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)を見に行く。さすがに2007年にリニューアルした新スタジアム、きれい。収容人数が9万人だとか! 当然中にははいれなかった(ツアーが毎日あるらしい)ので外観だけだけど、よかった。「サッカーの聖地」。

 

Wembley Stadium  Wembley Stadium

 

その後、ユーロスターの発着駅の St Pancras 駅周辺に移動して、大英図書館(British Library)へ。図書館利用の登録はすぐできるようだったけど、今回は時間がないので無料展示のギャラリーを見る。マグナカルタやシェークスピア関連の稀覯本などなど。それにならんで The Beatles の自筆歌詞が並べられているのがなんとも不思議だった。

 

British Library  St Pancras Station

 

とにかく歩いた4日間。寒かった+疲れた。けどさすがはロンドン。ほぼ計画なしでも、これだけ回れるところがある。高い物価には辟易も、入場無料の博物館・美術館がこれだけあるのはやっぱりすごい。今回はまったく触れてないけど、これにミュージカルなどの夜の楽しみもあるとなるとおそるべし街だなと。この寒い時期にこれほどの人出があるのも納得できる。まったく夏はどうなるのか。そして、ベルギーよりも秩序立っている感じがした。と言うか、やっぱ規制、規制、規制の国。左側歩けだ、ここでタバコ吸うなだ…。ベルギーの方が暮らしやすい気がする…。

2008年12月11日(木) :ぼ~っ

朝起きてからぼ~っとしている。風邪だといやだな。

2008年12月12日(金) :ぼ~っ, ベルジシスム, レコード, 善意の押し売り

あいかわらずちょっとぼ~っ。風邪の初期症状なのかなんなのか。身体丈夫な子だった筈なのに、不摂生が。ちょっと論文を書きは、ぼ~っ、ちょっと論文を書き、ぼ~っ。

そんな感じで引籠っていると、隣の部屋の奴が荷物を届けてくれる(帰ってくるときに大家に出会うと部屋に届けてと頼まれるシステム)。外界との接触。古本屋サイトで衝動買いした本:

      Doppagne, Albert et Hélène Bourgeois-Gielen (???) Belgicismes.

全くこんな著作(?)の存在を知らず、また « trois disques » 付きとあったので思わず買ってしまった。22.00EUR…。で、届いて見れば « disques » は当然のように「レコード」…。年代は記されてないけど、著者名と表題から推測するにおそらくは1970年代のもの。こんな時代に「CD」なんぞあるわけもなく。普通に考えればわかるもの。ということで「音声」メインのこの著作を楽しむことはできない。もはやコレクターズ・アイテム。ベルジシスム・マニア。

 

« Belgicismes »

 

ベルジシスム(belgicisme)=「フランスのフランス語とは異なるベルギーのフランス語の特徴 (Hanse, J et al., Chasse au belgicismes, 1971, p. 30) 。簡潔で素晴らしい定義だと思う、それを提示する本の立場は別として。「特徴」であって、一つの体系をなすものではない。あくまでフランス語の「特徴」。11月14日の日記に書いた Klinkenberg の分類を用いるとアメリカ的意味の方言である[方言1]。[方言2]であるワロニー語などの内発的地域語とはきちんと区別する必要があると思う。

内容は、« avoir facile »、« aller au coiffeur »、« il est déjà longtemps parti »、« assez bien de... » などの有名どころのベルジシスムが別冊子で紹介されていて、おそらくはレコードの中でその実際の使用例と「正しい」使用例が吹き込まれているのだと。

 

もちろんこのレコードは「正しい」フランス語に少しでも近付くために存在するのであって、それ以上でもそれ以下でもない。冊子の最初と最後に掲げられた一節がみょうに生々しい(強調は僕がしてみた):

・Voici une série de mots, d'expressions et d'usages fautifs particuliers à beaucoup de Belges.
・Si, par hasard, nos remarques concernaient votre propre façon de parler, soyez attentifs aux corrections que nous vous proposons.
・Pour vous aider à parfaire votre connaissance du français...

なんとなく「善意の押し売り」感がたっぷり。著者は大学(ULB)の偉い先生達、少しでも近づかなければ~となったのでしょうか、当時。にしても、« aller au coiffeur » とテストでやっちゃうと×だね完璧に。

2008年12月13日(土) :忘年会, 片道/往復, café, プリンタ, 司書

本日、リエージュ(近郊)在の方々が集う「忘年会」に参加させていただきました。なんと甘美な響き!「忘」「忘」「忘」「忘」「忘」、忘れましょう。日常にはない素晴らしい料理をいただき、とてつもなく素敵な時間を過ごしました。この地でシューマイがいただけれるとは感動。そう言えば写真がない。

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電車で向かうのにチケットを買う。最近はずっとパス使いなので窓口で買うのは久しぶり。と言い訳する。何故か。片道チケットを買ってしまいました…。どっぷり aller-simple「片道」と aller-retour「往復」を勘違いしていて、ホームまで行ってふと気付く。窓口に戻って変えれますかと聞くと、本当は駄目だけど今回は「特別」にと。で、往復にするために3.5EURの請求。うん? 片道(4.5EUR)でも週末割引往復(5.2EUR)でもない、« Billet shopping »(8EUR)のチケット。週末割引の方への変更は駄目だと言う。「特別」にはどうなった? というよりもこの « Billet shopping » って制度はそもそも何?微妙な値段設定だし、初めて聞いたし。分からん。どっちにしてもこのフランス語の間違いは凹んだ。

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電車で帰ってきてアルコールも入ってたのでもうちょっと飲みたくなった。部屋にアルコールはないので家から最近(←これは距離的に「最」も「近」いという意味では使えないのかな??)の café へ。ガヤガヤしている中ひとりぽっちで、けどおそらくはニコニコしながら、Jupiler(1.5EUR)×4。ご機嫌。部屋に着くとすぐに Mathieu がやってきて「待ってた」と。プリンタがどうしても使いたかったらしい。どうぞご自由になんなりと。宿題だと。彼は bibliothécaire か documentaliste(「司書」でいいのかな)になりたくてリエージュの公立図書館で学んでるんだけど、その宿題が興味深かった。研究書を評価する細かな基準(Grille d'analyse d'une monographie)があって、それを基に実際に本を評価するというもの。この基準が、「内容」もさることながら、「出版年」、「形態」、値段や絶版か否かを含めた「手にし易さ」、文献を含めた「構造」などなど、面白い。

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さすがに今日はもう学べない。おやすみなさい。

2008年12月14日(日) :スター・ウォーズ, ワロニー語

昨日教えてもらった『スター・ウォーズ』ワロニー語版。

2008年12月15日(月) :お土産, Proxis.be, 日本人論, Tintin, 赤いお薬

ここ一か月ほどに渡ってクリスマスにおよばれする際のお土産物をずっと探していた。クリスマス&大晦日&元旦はさみしかろうというやさしいベルギー友の配慮で家に誘ってもらっているんだけど、そのためのお土産。友へ一つと、ママへ一つ。いろいろ考えていた。ちょっと最近ネタ切れってところもある。アルコを飲まない家でもあるし、アルコは避けようと(ちなみにイギリスの先輩へのお土産は、先輩が全く飲まないけどベルギービアー&ベルギーチョコ。当然のごとく初日に僕が飲みきった)。

一つ友へのお土産には案があった。去年ブリュッセルにいたときに本屋さんで見かけた『日本歴史事典(Dictionnaire historique du Japon)』っていう本。これが二巻からなる重厚なもので、見た目もなかなか喜んでもらえそうなもの(参照)。これがなかなか見つからない。去年ブリュッセルでわりとたくさん見たから去年刊行のものかと思ってたけど実は2002年刊。リエージュでは発見できなかったので、ブリュッセルに探しに行ったりと。けど見つからない。出版社(Maisonneuve & Larose )にメールしたみたのの返事はなし。さすがにお土産に古本をおくるわけにはいかずこれは断念。

なんとなく「日本」なもの。で、日本の物、日本語の物、はもう渡してたので今回は絶対にフランス語で書かれた日本もの。ということで新たに探し始めたけど、これがなかなかピンとくるものがない。少なくともリエージュFnacには。ガイドブック系か、仏像全集系。後者でもいいんだけど…。まぁAmazon.frで検索。すると『LES JAPONAIS 日本人』(ISBN:9782847345254)という本を発見。2008年9月という新刊っぷり。これに決定。ママにでもいいかな~と。

 

ということで、ベルギーにてAmazon初注文。本の注文は古本屋か、新本なら送料無料のProixs.beだったんだけど。でも、Amazon.frがベルギーへの送料無料(何EURか以上)になってたのには驚いた、ただしなんか税金がかかるけど。届いた『LES JAPONAIS 日本人』がなかなか興味深かった。しおりまでこの本専用のしおりが準備されていて。AFPの特派員の方の書いたものらしい。自分用にも欲しくなった。人へのお土産物って自分も欲しくなりますね。裏表紙より↓:

 人に溢れた巨大都市、満員電車、職場での理不尽さ、男尊女卑、日本人が蟻のように生活しているということはよく知られている。
 尽きることのない創造性、国民の団結、伝統的慣習、信と義、完璧主義、謙虚さと礼節、日本が極東の至宝であることは疑いない。
 逆説? おそらく。理解できない? 確かに。
 間違えてはならないのは次のことだ。つまり、第二次世界大戦後のどん底から出発して数十年の間に、この国が世界第二位の経済大国、技術革新の先駆者、自国料理の発信地、素晴らしい芸術の発信地へと姿を変えたこと。とは言え、この国は政治や外交の分野では相変わらず小国に留まっている。まさにこのような商業面・技術面・文化面での威光と、限られた地政学的な影響の間の矛盾こそに、日本文明の多形的ともいえる両義性が表れている。その対比を糧とし、近代と伝統を調和させてた日本を理解するのは非常に難しい。

ある方では首尾一貫したものが、ある方では両義的と見える。と言うよりも、第三者には両義的なものほど目に映る、首尾一貫したものは映りにくい。実は、当事者にとっては両者は一緒な時もあるのかもしれない、つまり「両義的なもの ∈ 首尾一貫したもの」。私自身もまったく関係のないベルギーという第三(二?)国を研究の対象としている以上、必要以上に両義的な側面を探ろうと眼をぎらぎらさせ過ぎているのかもしれない。ただし、それは正しくて必要な行いだと思う。

 

このAmazon注文のおかげで、「タンタン・コレクション」がぐっと増えた。先の「フランス語」版、「リエージュ・ワロニー語」版に加え、「シャルルロワ・ワロニー語」版、「ニヴェル・ワロニー語」版(aclot と言うらしい)、「ブリュッセル語」版。「ブリュッセル語(le bruxellois)」ってのはフランス語とオランダ語が混じったクレオール語みたいなもの。で、ワロニー語の中にもこれだけべつべつ書き言葉の書物(漫画だけど)がでるのは、どうなんでしょう。ちょっと聞いてみなければ。

 

Tintin:フランス語  Tintin:リエージュ・ワロニー語  Tintin:シャルルロワ・ワロニー語  Tintin:ニヴェル・ワロニー語  Tintin:ブリュッセル語

 

・Ah ! le printemps !... Le joli mois de mai !... La nature... dans toute la fraîcheur du renouveau !...
・Ah ! Li prétimps... Li bê meûs d' may... Li vèye... qui s'rinovèle.
・Â ! èl bon tins !... Èl djoli mwès d' mé !... Èl nature qui r'vént pôjêr'mint a lèy !...
・Â ! èl boune sézo !... Èl bia mwès d' mé !... Ké bèle natur'... sintez 'l frècheûr dè tout c' qui rvike !...
・Ah, le printemps !... Le mois de mai ça est vraiment le plus tof des mois de l'anneï... La nature elle sproeite dihors la terre !...

 

やっぱりちょっと調子が悪い。風邪のせいにはしたくない。風邪だとしたらすでに二回目。このペースならどうなる!? ちゅーことで、ブルゴーニュとかが産地の赤いボトルに入った液体の薬をもってきてもらうことにする。

 

 

 

12月の後半へ



石部尚登(いしべなおと):naoto19@aol.com